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北海道、離れ、定年後...すべての条件を調和した自然素材空間

2017年01月20日 ── 北海道・家づくり ── 21962

 ご自宅に隣接した敷地に、終の棲家(ついのすみか)となる「離れ」として計画されたOさん邸。これから年齢を重ねていくご夫婦がゆったりと暮らせる、ワンルームのような伸びやかな空間が広がります。リビングダイニングの中心には、1枚の壁が。そこには、雪に閉ざされる北国の住宅で、少しでも自然光を感じながら快適に毎日を過ごすための工夫が集約されていました。

書いた人 斎藤 若菜

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    作った人 及川 敦子

    住んでいる人 夫婦

    家を、家族を支えながら寄り添う「壁」がある住まい
    •  掃き出し窓の下部にはタイルを敷設。床暖房を入れることで大きなガラス面(窓面)の下降冷気を抑えつつ、雪で濡れた手袋や帽子、靴などの雪を溶かし、乾かすことができる。夏場はリビングと庭の出入りに使われているが、植木などを置いても拭き掃除がしやすい

    •  セカンドライフを想定して建てられたOさん邸は、コンパクトな平屋にロフトを備えたミニマムな空間。家具もできるだけ置かず、シンプルに暮らせるよう設計されている。壁や天井に張った合板は節が多く主張が強いため、LDの中央に立てた斜めの壁は白で塗装。カーテンもツヤのある無地のファブリックを採用し、全体の調和をはかった

    •  斜めの壁の裏側は主寝室。壁の半分には放射暖房を設置し、もう半分は構造を露出しながら本棚にしている。Oさんの蔵書のサイズに合わせ、A4や単行本がぴったりと収まる高さに棚板を設置した

     Oさんご夫婦のお住まいは、北海道札幌市の住宅地。住み慣れた地で第2の人生を歩むにあたり、隣地に離れを作ることを計画した。「隣地はもともと祖父母の土地で、ここ数年は家庭菜園のスペースとして活用していました。現在の自宅は2人で暮らすのに広過ぎるので、ほどよい距離感で暮らせる、コンパクトな住まいにしたいと思ったんです」。


     漠然とした想いが具体的に動き出したのは、築30年の自宅を改修した親戚の家を訪れたことがきっかけだった。「同じ市内で暮らす親戚宅を訪れたら、壁や天井、壁を埋め尽くす本棚にも道産のカラマツが使われていて、とても居心地の良い空間でした。私たちも、木のぬくもりに抱かれながら暮らせたらいいなと思い、同じ建築家に依頼しました」。

     建築家の及川さんが提案したのは、邸内の至るところに道産を中心とした木材を採り入れた住まい。地産地消を実践しながら、気持ちの良い空間を作り上げた。「躯体にはトドマツの集成材を使い、あらわしにする部分には同じ樹種の無垢材を採用。軽やかで清潔感のある樹種なので、家全体が優しい雰囲気に仕上がりました。床には厚さ38ミリのデッキ用の道南杉を、接合部に凹凸を作って組み合わせるサネ加工を施して敷設。キッチンや洗面台などの家具や階段の手すりは、比較的傷がつきにくく、年を経るごとに赤みがかっていく様子を楽しめるカラマツで統一しています。外壁は、トドマツの下見板をグレーで塗装。玄関廻りにはレッドシダーを使うなど、様々な樹種の持ち味を引き出しながら、色や風合いの変化を楽しめる家になればと思いました」と及川さん。


     全体計画を考える中でポイントとなったのが、先すぼまりに変形した敷地のどこに、どのような形状の家を建てるかということだった。「隣地がO様のご自宅なので、隣地の庭も含めて空間の広がりが感じられるよう、外壁を斜めにしました。リビングダイニングの中央にも白く塗装した壁を斜めに立てることで、午後の光を家の中に導きました」。室内の壁は、北国の住宅で少しでも長い時間、明るく過ごせる工夫であるとともに、裏側の寝室を緩やかに仕切って落ち着きを生む効果も。暖房器具の設置や本棚のスペースとして、ロフトの床を支える耐力壁としても機能している。

     「娘の家族を呼んだり、入浴のために訪れたり、今は別荘のような感覚で楽しんでいます。トドマツを始めとする道産の木に囲まれた空間は、まるでリゾート地を訪れたようで、自宅と離れの行き来が気分転換になっています」とOさん。「別荘」から「終の棲家」へ。歳を経るごとに役割が変わりながらも、住む人を見守り続けてくれる、包容力のある家が完成した。

    • ロフトは、日常的に使わない物の収納や、お孫さんが泊まりに来ることを想定して設けられたスペース。正面の窓からは、生垣の緑が望める

    •  キッチンはカラマツ材の三層パネルで造作。3畳ほどのコンパクトな空間を機能的に使えるよう、瓶類をしまえるスライドストッカーを組み込んだり、冷蔵庫をダイニングの近くに配置できるようにして動線を短縮したり、袖壁に調味料を置けるニッチを設けたりと、Oさんの暮らしに沿った空間をデザインした。奥の壁はベージュグレーで塗装し、外壁とイメージを合わせている

    •  洗面所は天井を高めに設定。開口部を大きく取った高窓で自然光をいっぱいに取り入れている。一部を滑り出し窓にすることで、掃除の際は換気も可能だ。床にはリノリウムを敷設。天然素材ならではの優しい風合いを味わうことができ、比較的メンテナンスもしやすい

    母屋との関係や北国の冬事情に配慮した設計
    •  外観も室内も北国仕様のOさん邸。柱間に高性能断熱材を充填し、その外側にさらに高性能断熱材を外張り付加する「付加断熱工法」を採用することで熱が逃げにくく、1年中快適に過ごせる

    •  リビングダイニングから、玄関や和室を望む。全ての居室が一続きとなったワンルームのような空間を創出しながら、高低差や色のバランスを取ることで、視覚的な変化が楽しめる。家具も及川さんが提案。赤みがかった木肌が美しい、レッドチェリーのダイニングテーブルや椅子を配置し、様々な樹種が共存する空間にリズムを生んでいる

     ご自宅の離れを設計するにあたり、及川さんは2軒の調和や既存の垣根との関係性を考えながらプランを作成。離れの壁を斜めにすることで、母屋に寄り添っているような表情を与えた。

     外壁にはトドマツを採用。北海道ではお馴染みの下見板張りで、反りにくいよう通常の板よりも分厚くし、強度のある長ビスでしっかりと留めている。グレーの塗装を重ね、落ち着いた雰囲気を醸し出している。また、北国の住まいでは冬期、隣地への落雪に頭を痛めがちだ。無落雪型の平屋根にするケースも多いが、O邸は幸いにも、南面に庭が広がっている。そのため、庭に雪を落とす前提で屋根勾配を計画。庇も設けて、雪や太陽といった自然と共生できるよう配慮されている。

    作った人 及川 敦子

    以前、60台のご夫婦の住まいを設計させていただいたことがあるのですが、打ち合わせの際に「できるだけ長い時間、太陽の光が感じられる家にしてほしい」とおっしゃっていました。O様も同年代ですし、家で過ごす時間がほとんどとのこと。雪の多い地域にお住まいなので、なおのこと自然光を取り込みたいと考えながらプランニングしました。

    住んでいる人 夫婦

    グレーで塗装したトドマツの外壁は、この家の中でも特に気に入っているところです。角地で2面が道路に面しているため、周辺は人の往来が多いエリア。犬の散歩などで通りかかった人が、離れを立ち止まって見て行くことが多く、ちょっと嬉しくなります。

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