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黒い壁のなかに白い家!?難題をクリアしたオシャレ二世帯の知恵

2016年05月23日 ── 神奈川県・家づくり ── 17850

 住宅が密集した都市部に家を建てる際、大きな課題となるのが採光とプライバシーのバランス。明るく開放的な住まいを希望すると近隣の住宅が間近に迫るため、結果的にカーテンを閉じたままの暮らしにもなりかねないからです。そんな心配も見事に解決した、建築家ならではの技が随所に光る二世帯住宅を紹介します。

書いた人 荒井 直子

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    作った人 津野恵美子

    津野

    住んでいる人 夫婦+子ども1人

    一世帯の家のように見える仕掛けとは?
    • 白い建物をぐるりと囲むように設けた黒い壁。白い壁と黒い壁の開口部の位置をずらし、採光とプライバシーを両立した。黒い壁の高さ、開口部の位置は、子世帯、親世帯それぞれの身長から細かくシミュレーションして決めている。

    • 建物エントランス側の外観。玄関は1階(親世帯)と2階(子世帯)それぞれにあるが、街から見える玄関は黒い壁の一か所のみ。一世帯の一軒家のような佇まいだ。

    •  黒い壁と白い壁の間に設けた坪庭は二世帯で共有。室内空間を最大限に取るため、階段は外階段に。地域コミュニティに根付いた暮らしをしている親世帯のライフスタイルを考慮し、1階玄関横の開口部のみ一般的な目線の高さに窓を設けて街行く人とつながるようにしている。

    • 1階と2階の中間に設けた黒い壁の開口部。目線のレベルでは視線を遮りつつ、上部の空、下部の緑を見ることができる。隙間から見る景色が奥行きをつくりだす。

    • 天窓やハイサイドガラスなど、プライバシーを確保しながら明るさを取り入れる工夫を随所に。

    • 親世帯のリビングルーム。1階で光が入りにくいため、室内は白を基調としたシンプルな空間に仕上げた。

     分譲マンションや建売住宅をはじめ、ハウスメーカーの展示場や内覧会、ショールームなど、5年以上にもわたり100件以上の住まいを見て回っていたというAさん。しかしながら決め手に欠けるものばかりで、契約寸前で「本当にこの家に35年ローンを組んでいいのだろうか?」と踏みとどまったことも。そんな夫妻が出したのが、「私たちはお仕着せの家では満足できない」という結論。そして、建築家に家を建ててもらうという方向に舵を切ったときに出会ったのが、津野恵美子さんだった。それまで建築家に家を建ててもらうという発想はなかったAさんだが、津野さんがこれまで手掛けた一戸建てを見た際、「こんな家を建ててくれるなら」と、津野さんに家を建ててもらうことを即決したという。

     オーダーを受けた津野さんがまず思案したのが、限られた敷地においての二世帯住宅としての佇まい。一般的な造成地のため敷地にあまり余裕がなかったが、機能としては完全分離の二世帯住宅というオーダー。さらに、「玄関を分けたいけれども、玄関が並んだアパートのような風貌は避けたい」という要望も。一軒家としての風格は保ちながら二世帯分の機能を入れ込み、さらに採光とプライバシーのバランスもとるという難題に挑んだ。

     それらを一挙に解決することになったのが、隣地との境界いっぱいに設けた、敷地の周囲をぐるりと囲んだ黒い壁だ。

    「外壁と一部一体化した黒い壁は塀のようなもので、本体の白い壁との間は屋根のない坪庭になっています。この方法をとることで、建蔽率を最大限に生かして二世帯分の居住空間を確保することができました。また、黒い壁と白い壁の開口部を意図的にずらし、採光は入るけれども外からの視線は遮り開放感とプライバシーも両立しました。住宅としての機能は完全な二世帯分離ですが、坪庭空間をつくることで共有する部分もつくることができました」と津野さん。こうしたアイデアはまさに、すべてを一から作り出す建築家ならではのもの。「庭や外部空間で解決できない都市部の狭小住宅ほど、建築で何とかしないといけない」と話す津野さんの言葉どおり、制約の多い都市部の二世帯住宅の新たな可能性を感じさせる建物だ。

    好きなものだけを眺めながら暮らす、お気に入りの空間に。
    • 2階の子世帯のリビングルーム。現しにした天井、使い古したような風合いの床材、集めてきたインテリアが映える白い壁など、デザインとファッションが大好きなご夫妻のセンスをそのまま活かした空間に。ソファはアメリカでしか展開していない家具メーカー『トーモス・モーザー』のものを個人輸入するほどこだわった。

    • インテリアショップのようなリビングルーム。ご夫妻ともにデザインとファッションが大好きで、さまざまなコレクションを所有。それらを眺めながら暮らすことを夢見ていたというご夫妻は、家を建ててからはこのリビングで過ごす時間が長くなったという。

    • 限られた面積を有効活用するため、一部をロフト空間との二層構成にしていることも子世帯空間の大きなポイント。階段上層は寝室とロフト収納、下層にはシューズクローゼットとウォークインクローゼットが設けられている。

    • 二層部分の下層に設けられたウォークインクローゼットと、隣接する夫婦の書斎スペース。

    • 二層部分の上層に設けられた寝室と、その奥のロフト収納。

    • ロフト下部のシューズクローゼット。300足を超えるシューズコレクションを整然とディスプレイできる収納に。 

     デザインとファッションが大好きで、洋服やシューズなどのファッションアイテムをはじめ、沖縄で集めた米軍放出のインテリア小物など、とにかく多種多様のモノを多く所有していたAさん夫妻。これまではディスプレイする場所もなく、ただしまうだけになっていたため、それらを生かす空間設計を要望した。
     
     
     『Aさんご夫妻は、デザインの好みがとてもはっきりされていましたし、すでにたくさんのコレクションをお持ちでした。ここで建築まで同じテイストにしてしまうとテーマパークのようになってしまいますので、建築は控えめにし、インテリアが映えるようなキャンパスであることを意識しました。

     また、これまではせっかくのコレクションが取り出しにくい収納になっていたので、効率的にたくさんのものが見渡せるような収納、空間構成にしています。収納は面積だけで考えがちですが、たとえば部屋の角に設けた小ぶりのウォークインクローゼットのように、人が入るスペースや扉の開け閉めのスペースを考えると非効率的な場合も多いのです。 Aさんの家ではなるべく細長く収納スペースを設けたり、ロフト空間を活用するなど、活用度の高いプロポーションを意識して設計しました。

     Aさん夫妻の居住スペースは以前の借家より狭くなっているのですが、収納を効率的に作っているので今の家のほうがすっきり広々と使えるようになったそうです』

    と津野さんは語る。



     2階の子世帯空間の一部を二層に分けるという技ありプラン。寝室や書斎のスペースは限られるが、収納はしっかり機能的に設置。そのぶん、リビングルームは広く確保されたメリハリのある空間に仕上がった。

    作った人 津野恵美子

     

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