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撮影 栗原宏光   

子育てと旗竿地の問題に回答を!3階建て×スキップフロアの家

2016年10月26日 ── 千葉県・家づくり ── 32302

 採光や開放感の確保が気になる敷地。でも、駅徒歩圏で子育てや教育を含めた周辺環境は理想的。そんな土地に家を建てることになったSさんは、頼れる専門家を求めて建築家・近江利雄さんに相談する。近江さんの提案は、木造3階建てのスキップフロアの家。採光と共に空間の一体感を大切にした開放的な住まいには、さすがのノウハウが盛りだくさん!

書いた人 KLASIC編集部

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    作った人 近江 利雄

    住んでいる人 夫婦+子ども2人

    2階、3階はひとつの大空間。家族の距離が近いのびやかな住まい
    • 撮影 近江利雄

      2階 キッチン~ダイニングへの階段/キッチンから4段の階段をあがったところがダイニング、リビングになっている。少しずつ床の高さレベルがあがるスキップフロアが、空間の広がりや一体感を生み出す(竣工時撮影)

    • 撮影 栗原宏光

      2階 リビング~ダイニング~キッチン、3階への階段/キッチンカウンターの目の前にあるダイニングテーブルは堀座卓。一段低いキッチンに立つ人と目線が同じ高さになる。空間的にもテーブル&椅子よりすっきりした印象に。3階ロフトの大梁下にはブランコを設置し、お子さんお気に入りの遊び場になっている

    • 撮影 栗原宏光

      2階 キッチン/ダイニング、リビング、テラスを見渡せるキッチン。カウンター下の棚はダイニング側がスリガラスの引き戸付き(写真は外してある)で、食事中にちょっと調味料が欲しいときなどにサッと開けてとることができる。写真右手は水まわりに続き、家事動線もよい

    • 撮影 栗原宏光

      2階 ダイニング/ダイニングテーブルは堀座卓として使えるように堀座を造り付けとした。座ったときの視線が低く、空間をより広く感じられる。座る部分にはスライド式の床下収納を設置

     家づくりは不動産や設計、施工など、専門性が高い分野とかかわらざるをえない。多少腑に落ちない話があっても、そういうものなのか、はたまた別の方法があるのか素人には判断がつきかね、悩むことも少なくない。

     子どもがのびのびと育つ、自分たちらしい家を……と考えていたSさん夫婦も、宅地購入で不動産業者とのやりとりに苦労したという経緯があった。最終的にはまるくおさまったものの、その経験から「家をつくるときは信頼できる専門家にじっくりと相談しながら進めたい」と考えるように。

     もともと好みだった“木の家”を多く手掛け、建設予定地の土地勘もありそうな建築家をインターネットで探し、いくつかの事務所にコンタクトしたSさん。実際に何人かの建築家と会って話をするなかで、最終的に近江さんに決めた理由は「いちばん相談しやすかった」から。「実際、どんな要望や疑問にも近江さんは丁寧に答えてくれました。細かいこだわりも、むしろそこから話を広げてくれたりするので、とても話しやすかったですね」と振り返る。

     S邸設計にあたり、近江さんがまず考えたのは“家族の一体感”だった。設計期間はちょうど第一子が生まれた直後で、まさに子育て世代家族の家づくり。大人がくつろげて、家事がしやすく、のびのび遊ぶ子どもと一緒に大きなひとつの空間で過ごせる……そんな家を目指して、「お子さんとの目線が近く、かつ、広さを感じられる空間」とするためにスキップフロアをとり入れた。

     “家族の一体感”というコンセプトが最も顕著に反映されているのは、2階のLDKと子ども部屋などがある3階だ。1階~2階の階段をのぼるとすぐにキッチン、そこから4段(60cm)あがるとダイニング、リビング。ダイニングはキッチンカウンターの目の前で、ダイニングテーブルは堀座卓として使えるように堀座を造り付けてある。おかげでダイニングテーブルの堀座卓に座ったときの目線は、キッチンに立つ大人の目線とちょうど同じくらいの高さに。ダイニングとキッチンにいる家族が同じ目線で、しかもごく近くで、自然にコミュニケーションがとれるというわけだ。

     ダイニング、リビングは3階との吹抜けで、天井高は3.6~5m。リビングの先には広々したテラスが続き、外への広がりも十分。堀座卓は、テーブル&椅子を置くより空間がすっきりするうえ、目線が低くなり、ただでさえ天井の高い空間をより開放的に感じられるのもメリットだ。

     一方、水まわりはスキップフロアの高さレベルをキッチンとそろえ、背面隣りに配置しているのもこだわり。家事動線はフラットにして効率よくまとめることで、スキップフロアにありがちな”段差”に阻まれることなく、あれこれ手がかかる毎日の育児や家事も快適にこなせる。

     こうして生まれた2階と3階の大空間。とくにリビング、ダイニングは家族みんなの一番お気に入りの空間になっていて、お子さんたちは、遊ぶときもここに目いっぱい道具を広げて自由にのびのびと楽しんでいるのだとか。両親もそれぞれのことをしながら自然なかたちで見守り、加わることができるという。

     「夏はテラスにテーブルを置いて窓を開放し、テラスも部屋の一部のように使います。バーベキューのほか、普段のおやつやランチもテラスで楽しんだりしますよ」と奥さまが言うと、今は小学生になったお子さんが「素麺だけどね!」とひとこと。「いいじゃない、素麺」と笑い合うSさん一家を見ていると、明るくのびやかな空間での幸せな暮らしぶりが伝わってきた。

    • 撮影 近江利雄

      2階 リビング/ダイニング、リビングは天井高3.6~5mの吹抜けで、明るく開放感たっぷり。その先にはテラスが広がる。床はパインの無垢材、塗り壁は調湿、消臭にすぐれた自然素材のシラス壁。この塗り壁は1階の寝室でも使用。寝室はSさん夫妻の手で壁塗りした(竣工時撮影)

    • 撮影 近江利雄

      2階 テラス(室内から)/テラス床材とルーバーフェンスは耐久性の高い高熱乾燥木材とベイヒバ。床はリビングとフラットになっていて、ひとつながりのような一体感がある。暖かい時季は窓を開放するとリビングにいながら半戸外のような心地よさを味わえる(竣工時撮影)

    • 撮影 近江利雄

      2階 テラス/外部の視線を遮るルーバーフェンスは高めにしているが、近江さんはルーバーに斜めの角度をつけ、光と風をよく通すように設計。夏はアウトドアテーブルをいつも置いておき、ほぼ毎日ここでランチやおやつを楽しむそう(竣工時撮影)

    隣家が建っても抜群の採光と通風をもたらす、高さと窓配置の工夫
    • 撮影 栗原宏光

      外観/現在は南西隣の宅地に家が建ち、道路からの小道を入って3軒目となるS邸。しかし、近江さんの工夫を凝らした設計で主な生活空間は隣家の日陰にならず、また、人目も気になりにくく、明るく開放的な住まいになった

    • 撮影 近江利雄

      2階リビング ハイサイド窓/吹抜けの大空間は、ハイサイドの窓から入る自然光で心地よい明るさに満ちている。この窓は月見にもちょうどよく、Sさんのお気に入り(竣工時撮影)

    • 撮影 栗原宏光

      2階ダイニング~3階通路兼多目的スペース/2階にいると、3階の通路兼多目的スペースが視界に入る。2階と3階はひとつの大空間としての一体感があり、お子さんが3階で遊んでいても気軽に声をかけ合える

    • 撮影 栗原宏光

      2階ダイニング~3階通路兼多目的スペース/2階にいると、3階の通路兼多目的スペースが視界に入る。2階と3階はひとつの大空間としての一体感があり、お子さんが3階で遊んでいても気軽に声をかけ合える

    • 撮影 栗原宏光

      3階 通路兼多目的スペース/子ども部屋の前にカウンターを設置。この下がダイニングなので、勉強するお子さんの様子が階下でもわかりやすい。ここの天井は建物最上部となるため、採光と熱気抜きとして内倒しのハイサイドライトを設置。写真右奥の多目的なロフトまでは手すりを兼ねた本棚を造り付け。ロフトには大型窓が2箇所あり、日差しが階下までふんだんに入る

    • 撮影 近江利雄

      3階 子ども室/2階吹抜け側に開放されてリビングなどとゆるやかにつながる。入り口は4枚引き戸を設置でき、個室が必要になれば中央の梁で間仕切りが可能。現在はハンモックをつるして楽しい遊び場に。部屋は北西奥に位置するが、全方位に窓があり採光・通風を得られる

    • 撮影 栗原宏光

      1階 アプローチ~玄関/木材とガルバリウム鋼板のバランスが絶妙な洗練された外観は、デザインの細部までこだわった。玄関庇は強化ガラス。「3階建ての高い建物で外壁に入るラインを縦にすると高さが強調されるため、横ラインとしています」と近江さん。この玄関までのアプローチには、グリーン好きの奥さまが花や野菜を育てる植栽スペースもある

     空間の一体感のほかに、近江さんが設計上で重視したことがもうひとつ。それは、”南西の道路との間に2軒分の宅地があり、さらに他方位も囲まれている旗竿地”というS邸の敷地環境に起因する。「南西にいずれ住宅が建つことを考えると採光の確保も課題でした。3階建てで、大きな吹き抜けを持つ2階のリビング・ダイニングを家の中心とするプランは、高い位置からふんだんに採光する狙いもあったのです」

     2階のほか、寝室とゲストルームのある1階にもとり入れたスキップフロアも、課題であった採光の確保につながっているという。2階はキッチンと水まわりが一段低く、1階は、日常的に使用しないゲストルームが一段低い。逆に言うと“毎日使う空間“、特にリビング、ダイニングを少し高く設定してあり、さらに吹抜けを採用したことで、木造建物の高さ制限がある中でも、より高い位置にハイサイドの窓をつくることが可能になった。そのため、将来にわたり近隣の建物に遮られることなく、また、外部の人目も気にせずに、たっぷり採光できるのだ。

     3階に設けた、子ども部屋と接するL字の通路兼多目的スペースも採光のポイントになっている。このスペースは本棚や、お子さんの勉強机としてもSさんの書斎としても使えるカウンターが造り付けてあり、2階を見下ろせる造り。通路兼多目的スペースの南西は隣家側だが、近江さんはここも多目的なロフトとした。ロフトなら“いつもいる空間”ではないから大胆な透明ガラス窓を設置でき、ここから入る陽光も吹抜けの階下のリビングに燦々とそそぎ込む。

     3階建て×スキップフロア、工夫を凝らした設計によって効率よくとり込まれた光は、自然素材の塗り壁と無垢材で仕上げたぬくもり漂うLDKを爽やかに包む。そして、視線を少し上に向ければハイサイドの窓に広がる青い空。近江さんのわかりやすく丁寧な説明で、完成した住まいはすべてイメージ通りだったというSさん。「夜、夫婦でお酒を飲みながら、ハイサイドの窓越しに月や星を眺めているときがいちばんリラックスできる時間です。日当たりも風の通りもよくて住み心地は最高ですね」と、笑顔で語ってくれた。

    作った人 近江 利雄

    Sさんご夫婦とは、設計中はもちろん現場進行中もお互い色々とアイデアが沸き、じっくりと時間をかけてたくさんのキャッチボールができました。その結果、将来的に厳しくなることが予想される敷地環境を克服し、可変性や遊び心があり、それでいて機能的な、明るく楽しいSさんらしいお住まいが完成したと思います。お子さんの成長に合わせて、お住まいがこれからどのように変化をしていくか楽しみです。

    住んでいる人 夫婦+子ども2人

    最初はスキップフロアの空間の想像がつかなかったのですが、段差部分で分割できる家の模型に私たち夫婦の身長に合わせた人形を立たせたり、近江さんが内装設計した飲食店のキッチンとカウンターの位置関係が似ているということで、お店のキッチンに立って体験させてくれたり、何事も丁寧にわかりやすく説明してくれました。また、寝室の壁塗りなどにも参加ができて愛着も深まり、理想的な家づくりが出来たと満足しています。

    スペック
    所在地
    千葉県柏市
    家族構成
    夫婦+子ども2人
    構造
    木造在来工法
    規模
    3階建て
    設計期間
    2007年09月~2008年08月
    施工期間
    2008年09月~2009年04月
    敷地面積
    124.61㎡
    延床面積
    127.99㎡
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